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ウェッジ文庫から新刊二冊が届く。編集部の服部滋さんのご好意である。いつも忝なく思ふ。
ただ、敬愛する方の作られた本だから、といふのではなくて、本そのものの力に圧倒されて、皆さまにすぐにでもお勧めしたくなる。帯の文章とともにご紹介しよう。 1 平山蘆江『東京おぼえ帳』 無類に愉しいゴシップ満載。 梨園の花、花柳界の名妓、明治の元勲、大正の成金——。明治・大正・昭和へかけて個性豊かな人々の織成す大東京の風俗絵巻。 2 楠見朋彦『塚本邦雄の青春』 歌人誕生。 現代短歌の巨人塚本邦雄が「水葬物語」で颯爽と登場する迄の知られざる試行錯誤の日々がいま明らかになる。文庫オリジナル。 平山蘆江(1882/1953)は名のみ知つてゐたが、まともに読んだことはない。解説の鴨下信一はかう書いてゐる。 ……東京の過去をなつかしむ〈ノスタルジックな気分〉からは遠い本だ。本当はそこが一大特色なのである。 蘆江といえば都新聞の花柳演芸記者として、芝居にくわしく、花街の裏に通じ、自身小唄の詞章の筆をとるなど邦楽の知識が豊富で、いわゆる通人の風があったから、さぞや江戸趣味の横溢した本かというと、それも違う。 読んで感じるのは、今に通じる東京という大都会のふつふつと滾るような生のエネルギーであり、淡泊な懐古趣味ではなく脂っ濃い欲望の、現実感(リアリティ)のある記録(ドキュメント)であることだ。 勘所を押さへたすばらしい解説である。 塚本邦雄論の解説は辻井喬。私は辻井喬が好きで、よく読んでゐる方だと思ふが、この解説も見事である。塚本邦雄はもつとも愛する歌人のひとりで、1982年に刊行された『定本塚本邦雄湊合歌集』は清水の舞台から飛び降りる思ひで購〈あがな〉ひ、愛読したものである。それゆゑ、この本のどの章もふかく心にしみてくる。新しい発見に満ちてゐるとともに、ああ、ここにも塚本邦雄をかくも愛する方がをられるといふ、著者には失礼ながら一種のfraternitéを感じないではゐられない。 二冊ともに、読書の愉しみをたつぷり味はふことのできる貴重な文庫である。いつもながら、謹んでお勧めする。
by romitak
| 2009-02-20 09:02
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