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最初に引用する。
「……優れた作品の持つポエジーは、誰の《詩》、かれの《詩》という区別なしに、ひとの心をはげしく捉える「宇宙感覚」「個々の存在を含みつつ超える幻想性」を具有しているはずのものである。そして、その「感覚」、その「幻想性」は、非現実であると同時に、われわれを日常感覚から切り離し、より深い世界の実相に直面させるという意味で一層「現実的」でもある。 この点は、逆もまた真で、一見「日常的・現実的」な表現が、その背後に広大な「超現実幻想」の野を隠し持っているケースもある。短歌に転じた前氏が選び取った道は、むしろこちらの道であった」 「宇宙感覚と幻想——前登志夫について、断章ふうに」と題された文章の一節だが、ポエジーを定義して、これほど簡潔にその本質を云ひきつた文章はさう多くないと思ふ。 一昨日、日帰りで大阪にゆき住大夫師の至藝を聴き、満足して帰宅した私を待つてゐたのが、一冊の本だつた。 入沢康夫著『ナーサルパナマの謎 宮沢賢治硏究余話』(書肆山田)。 入沢先生はこの新刊の御高著を私にまでご恵与くださつたのである。 ちよつと中身を確かめるつもりで読み始めたら止まらない。一冊を読みきつてしまつた。今後も折に触れて再読することになるだらうこの本の魅力の一端は、詩人、学者、文人としての存在が、みごとな生活者でもあられる入沢康夫先生といふ大いなる人格に溶け込んで、そこから生まれた文章がときに読む者の怠惰を叱咤し、ときに慰め、灯台のやうに行き先を照らしてくれる点にある。 この九月にプルースト個人全訳を開始した私にとつて、本書は短からぬ航海の何よりの伴侶となるだらう。入沢先生の励ましを背中につよく感じながら、プルーストの翻訳を進めてゆくといふのは、私にとつて何より嬉しきことである。 入沢先生は、「一九三一年の十一月三日、賢治が手帖にあの『雨ニモマケズ』の言葉を書き記した、まさに当日——同年同月同日」のお生まれである。ますますご健勝であられるやう、切にお祈り申し上げたい。先生の文業は、今までと同じやうにこれからも私たちをつねに根柢から慰藉しかつ鼓舞して下さるに違ひないのだから。
by romitak
| 2010-10-11 10:56
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