人生で最初に買つたレコードは小学校中学年の頃の「アマリリス」だつたと思ふ。これはいまでもソラで歌へる。一方、ぺートーヴェン第九が流れると、合唱のところ、つい「晴れたる青空」と口ずさんでゐる。その訳詩は二つながら岩佐東一郎による。
岩佐東一郎は詩人にして、同時にたいへんな読書家であつた。
『書痴半代記』を読むとその本に対するあまりの傾倒ぶりに圧倒され、しかし、程度の差はあれ、本への愛といふ点では共通するものを感じ、何とも嬉しくなるのだけれど、こんなことを書くことができるのも、ウェッジ文庫の服部滋さんから新刊『書痴半代記』を御恵送頂いたからである。
堀口大学、日夏耿之介の弟子と云へば、ある程度ご想像がつくと思ふ。序文は城左門。
南柯叢書のことも書いてある。どのページを披いても、書物に対するたぢろぐほどの情熱がしづかに語られてゐる。服部さんは心憎いまでの選書をなさる。
ただただ感謝するのみであるが、ウェッジ文庫はかく魅力的でかつ片時も目を離すことが出来ない。さう思つておいでの方は世にあまたをられることだらう。