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かつて学生の頃、学部から博士課程まで十数年間、早稲田にゐながら早稲田派と云はれる文士たちをさう愛読してゐたわけではなかつた。もちろん、結城信一や小沼丹、牧野信一、野坂昭如は大好きだつたし、井伏鱒二、三浦哲郎、後藤明生、小林信彦、立原正秋、結城昌治、李恢成、高井有一、竹西寛子、横光利一、火野葦平、中山義秀、正宗白鳥、広津和郎、尾崎一雄……と名を挙げてゆけばそれなりに、あるいはかなりの程度読んではゐた。しかし、尾崎士郎、五木寛之、丹羽文雄、石川達三といつた作家たちはせいぜい一二の作品を読んだだけで、積極的にその後まで読むことにはならなかつた。爾来、数十年を閲しても基本的な好悪は変はらないと思ふ。ただ一人だけ、最近になつて自らの迂闊さを思ひ知らされた文士がゐる。確実に読んだと云へるのはただ一冊のみ、『昭和文壇側面史』(1968。講談社)。『昭和の作家たち』は読んだやうな気がする程度。三巻の『著作集』(1974。河出書房新社)は書店の店頭で手に取つたものの買ふには至らなかつた。死亡記事は見た記憶がある。
浅見淵。1899年生れ。それこそ私の愛読してやまぬ石川淳と同年の生れである。1973年他界。小説家にして文藝批評家、随筆家、編集者、そして教師だつた。 先日、ちらりと書いたやうに、ウェッジ文庫の服部滋さんから『浅見淵随筆集 新編 燈下頬杖』を頂き、数日かかつて大切に繙讀した(ところで平仮名入力をしてゐる老眼のひどい私ごときうつけ者からすると、しばしば丸/半濁点と点/濁点を打ち間違へて気づかぬことがある。ブ(濁点)リヤンバダと打つたのはもちろん「プ(半濁点)リヤンバダ」のミスである。最初に打ち間違へると、次からは最初の一文字で変換候補が出る設定になつてゐるのでなかなか気づかない。訂正しておく)。 これはおそらくは服部さんがお書きの帯の文章をそのまま引いたはうがいいだらう。 文芸随筆の精華——。 徳田秋聲、瀧井孝作、井伏鱒二、梶井基次郎、尾崎一雄……親しくまじわった小説家たちを回想する芳醇な文章。 文芸評論家・浅見淵の半世紀にわたる文業から、代表作を精選した滋味掬すべき随筆集。 加へて、服部さんの親友であられるqfwfqさんの、「批評家浅見淵の本領」と題されたみごとな文章。 http://d.hatena.ne.jp/qfwfq/ 実際、この本に収められた諸家にまつはるエッセイを読んでゐると、小説の読みかたを今更ながらに教はる気がする。泉鏡花にしても、芥川にしても、葛西善蔵、谷崎潤一郎、岩本素白、井伏鱒二、内田百にしても、ああ、かういふ見方があつたか、とかこれは存外正しい見方かもしれないと思ひつつ、同時に、このやうな筆遣ひで作家や作品について書かれた文章を久しく読んでゐないといふことに改めて気づくだらう。さかしらとはまつたく無縁の場所で、自分が誠実に読み解いたものを誠実に書きつけてゆく。さればこそ、たとへば『細雪』を「心境小説」と喝破することもできるので、そこにあるのは、作品に対する限りない愛情とまつすぐな眼差し、そして作品を生み出す小説家に対する純なる敬愛の思ひであらう。かくも読んで気持ちのよい文藝随筆は珍しい。この本に就いて服部さんは私へのお便りで以下のやうに仰せである。差し障りのないところに限つて引いておきたい。 『新編 燈火頬杖』は、昨年暮れに素白を出した直後に藤田三男さんに編纂を依頼した一年がかりの本です。 この本だけはゆったりと流れる時間のなかで心底愉しんでつくりました。筋金入りの文藝編集者の藤田さんに、打合せのたびにいろんな話を拝聴するのが愉しみでした。 このままいつまでも「編集中」の状態が続けばいいとまで思ったほどです。 編集者冥利に盡きる一冊。それはまた読者にとつても最も大切な読書の時を保証してくれる一冊の謂でもあるだらう。浅見淵『燈下頬杖』。この本を心よりお薦めする。
by romitak
| 2008-12-27 11:56
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